【決勝結果】
日本文理 0 1 1 0 0 0 1 1 5 9
中京大中京 2 0 0 0 0 6 2 0 x 10
両軍合わせて31安打の打撃戦の幕開けとなったのは6回裏。この回、中京大中京は打者11人で一挙6点を奪って試合を決めたかに見えたが、日本文理がジワジワ追い上げ迎えた最終回。2死から連打などで5点を奪い1点差まで詰め寄った。しかしエース堂林投手をリリーフした森本投手が最後に何とか凌いだ中京大中京を逆転する事は出来なかった。
<コメント>
ここ数年、夏の大会の決勝では後に語り継がれるようなドラマチックな展開で優勝校が決まっている。再試合の末、頂点に上り詰めた2006年の早稲田実業。私学の特待生問題が世間を騒がせる中で優勝した公立の佐賀北など。今年の決勝は果たして…。
共に圧倒的な攻撃力で勝ち上がって来た中京大中京と日本文理との間で争われた今年の決勝は、中盤の大量得点を奪った中京大中京が試合を優位に進め、最終回を迎えた決勝戦。このまますんなり幕が閉じるのか誰もが思った瞬間、この試合最大のハイライトが最後に用意されていた。
「約半世紀の時を経て古豪復権!!」
最終回、点差を徐々に詰められた中京大中京。そのナインの脳裏を、特に堂林投手の脳裏を「あのシーン」がよぎったのは間違いないのではないだろうか。
「あのシーン」・・・。勝利に手が届くところまで辿り着きながら、結局手に届く事はなかったセンバツ準々決勝の報徳戦。そしてあの悪夢が再び・・・。
しかし最後に試練を与えた勝利の女神はあの春以降、苦しい練習に耐えたであろう中京ナインを見放しはしなかった。約半世紀の時を経て深紅の大優勝旗は伝統校の手に渡った。
「雪国の悲願まであと一歩!!しかし…」
「野球はツーアウトから」と言う格言があるが、まさにその通りとなった最終回。日本文理の看板である打線が目を覚まし、一気に点差を縮めた。スタンドの声援を味方に付け同点或いは逆転の雰囲気が漂った。しかしこの大会の序盤、「雨」と言う悪戯で気紛れな心を見せた勝利の女神は、最後の最後に再び気紛れな心を見せ最後の打者の痛烈な当たりを野手の正面に導いた。「夏の大会初めて勝ったチームをそのまま頂に導く訳にいかない。」と言い聞かせているかのようだった。
それともう1つ。投手の継投が主流となっている高校野球だが、そんな中、この大会1人で投げ抜いた伊藤投手には拍手を送りたい。攻撃力ばかりがクローズアップされて来た日本文理だが、伊藤投手の踏ん張りがなければここまで勝ち上がる事は出来なかったと思う。
今年の夏の大会は初出場校が多い事から見ても分かる通り、多くの地方予選で混戦となり前評判の高かった学校が次々と敗れ、その傾向は全国大会でも続いた。各地区とも有力選手が分散する傾向にあり、かつて甲子園常連だった学校が出続けるのは難しいのかも知れない。
しかし、決勝に残った2校は共に春のセンバツにも出場し、そこで見つけた課題を克服し甲子園に戻って来た。
中京大中京は報徳戦で露呈した1球に対する集中力、一方の日本文理は優勝した清峰の今村投手に抑えられた経験から、どんな投手にも対応できる打撃力に磨きをかけた。経験を生かし、持てる実力を十分発揮して決勝まで進んで来たのがこの2校だったと言う事なのだろう。特に日本文理の準優勝は野球が弱いと言われている県の球児にとって励みになるだろう。
今年も様々なドラマが人々の心をくすぐった夏の高校野球。果たして来年はどんなチーム、選手がファンの心をくすぐるのだろうか。今回出場した選手の次のステージでの活躍と来年こそは、紫紺の或いは深紅の優勝旗が我が故郷の東北地方に届く事を期待しつつ「筋書きのないドラマ2009夏」の項を終わりにしたいと思う。

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