広島皆実は中盤でボールを支配し、準決勝まで27得点を叩き出した鹿児島城西の攻撃を凌いだ。一方、鹿児島城西はFW大迫が1大会通算得点の新記録となる10点目を上げたが、自慢の攻撃力を発揮する事が出来なかった。
【試合結果】
広島皆実 3−2 鹿児島城西
(広島皆実は初優勝)
<コメント>
広島はかつて静岡、埼玉と並んで、いわゆる「サッカーどころ」と言われる地域だった。だがインターハイでは好成績を収める年はあっても、冬の選手権では国立の舞台を前に敗れる年が続いた。広島県勢としては広島皆実が初めて晴れの舞台を踏んだ。
3連休最後の日という事もありほぼ満員のファンが見つめる中で行われた決勝戦は小雪舞う中で始まった。(雪が降っていたのは都心だけだったのだろうか。我が家の近所は晴れていたので、テレビを見ていて驚いた。)
今大会、FW陣を中心に毎試合大量得点で勝ち上がって来た「攻」の鹿児島城西に、「守」の広島皆実がどう立ち向かうのか注目された試合は、戦前の予想に反して中盤から激しいチェックでボールを支配した広島皆実の攻勢で試合が進んだ。先制点を先に奪われたが、組織で相手の攻撃を断ち切った。3点とも内容のある得点だったと思うが、特に1点目と3点目のクロスの精度の高さが光った。出し手と受け手の呼吸がぴったり合った見事な得点だったと思う。それと終盤で時間を稼ぐ、心憎いまでのボール回しに「大人のサッカー」を見た感じがした。今大会は、終了間際に点が入るケースが時折見られたが、終盤の相手のセットプレーも落ち着いて対処出来ていた事と併せて、普段からそのようなケースを想定して練習を積み重ねているのだろう。まさにチームで勝ち取った栄冠だと思う。
一方、ここまで爆発的な得点力で勝ち上がってきた鹿児島城西は鹿島アントラーズ入りが内定している大迫選手が大会通算得点を更新する10得点目を上げて先制し、もう1人のFW野村選手も全試合得点と片鱗を見せたものの、相手の厳しいチェックで前線に有効なボールを供給する事が次第に難しくなり前線が孤立する場面が目立った。課題とされたディフェンスもサイドを支配され対応が遅れた。ここ数年、長崎の国見を中心に躍進著しい九州だが、優勝旗を持って帰る事は出来なかった。
ただ1試合で4、5点取れる攻撃力はファンに強烈な印象を残したのもまた事実である。そのチームを牽引した大迫選手。ボールを持つと何かやってくれそうだ、と言う思いを見ている者に抱かせる事こそが大器の証しだと思うが、今大会の彼のプレーがまさにそうだったような気がする。今後アントラーズで厳しい環境に揉まれて成長し、是非日本を背負って立つストライカーに育って欲しい。
Jリーグの創設で下部組織が充実した事により地域間格差が無いに等しい昨今の高校サッカー界。来年はどんなチーム、選手が大会を盛り上げるのか。88回目の大会もファンに感動を与えるような大会になるよう期待したい。
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