【試合結果】
西 武 0 0 0 0 1 0 0 2 0 3
巨 人 1 1 0 0 0 0 0 0 0 2
【勝】 星野 1勝 0敗 0S
【負】 越智 1勝 1敗 0S
【S】 グラマン 0勝 0敗 2S
<コメント>
西武ドームで行われた第3戦〜第5戦のテレビ中継でゲスト解説を務めた横浜ベイスターズの工藤投手が、どこかの新聞のインタビューで「もし第6戦西武が取ったら、石井、涌井が残る西武が第7戦有利になる。」と言うようなコメントを残したらしいが、その予言通りの結果となった。
第7戦までもれ込んだ今年の日本シリーズ。熱戦が続いたこのシリーズを制したのは、崖っぷちに立たされながら、MVPを獲得した岸投手の快投で息を吹き返したライオンズだった。
シリーズを振り返ると、前述の通りターニングポイントとなったのは第6戦での攻防だと思うが、最終戦となる第7戦のポイントは、継投と経験とシーズンの戦い方とは違う、いわゆる奇策だったと思う。ここからは、勝負事で禁句の「タラ」、「レバ」の話が多くなるが、ご容赦願いたい。
まず日本一の栄冠に輝いたライオンズ。先発はベテランの西口だったが、これは大方の予想通り。しかし日本シリーズで勝った事がなく、おまけに東京ドームとの相性も良くない。もし2−0のまま試合が終わっていたら、渡辺監督の起用法に疑問を呈する者も出てくるだろう。それを帳消しにしたのが、続いて登板した石井、涌井の両投手の好投である。シーズンでは有り得ない、しかも打順が回ってくるまでの限定登板と言う、なりふり構わぬ継投策が功を奏した。これで序盤、相手に傾いた流れを引き戻した。もし渡辺監督が実戦から離れている西口投手は見せかけの先発で石井、涌井で勝負する、と最初から考えて起用したとしたらなかなかの役者である。これも第6戦で岸投手が途中から1人で投げぬいた事によって成せた業ではある。
そして逆転した8回の片岡選手の初球盗塁と本塁突入のプレー。ほとんど警戒していなかったように見えた巨人守備陣の虚を突く好走塁だった。あれで巨人の勢いは完全に止まった。それにしても、逆転の場面でシリーズ絶好調の平尾選手に打順が回ってくるとは・・・。このシリーズを象徴するシーンだったように思う。
一方、第5戦を取って先に王手をかけながら寸前で日本一の称号がスルリと逃げていったジャイアンツ。もし勝っていたら第5戦のラミレスの激走がターニングポイントだと思っていた。(最終回に西武の平尾選手がクルーンから放った一発が逆風への序章だったのかも知れないが)しかし、岸ショックは想像以上に打線にダメージを与えていたのか、最終戦も火を噴く事はなかった。それでも相手からもらった1点とホームランによって得た追加点を何とか必死に守ろうとした。原監督は渡辺監督とは対象的に最終戦もシーズンの継投を踏襲した。明日なき戦いを続けて来た西武とは立場が違う。奇策は必要ないだろう。しかも越智投手はシーズン優勝に貢献した選手の1人である。結果、日本一の称号を得る事は出来なかったが、若い選手が多いチームにとっては貴重な財産となったシリーズなのは確かである。
しかし敢えて厳しい言い方をすれば、日本一と言う目標に徹するのであれば、大舞台での経験度を考えると8回の最初からそれが豊富な豊田投手にスイッチしていたら、違う結果になっていたかも知れない。あくまで結果論であるが・・・。更に同点になってからの投手起用が後手に回ってしまったのが悔やまれる点である。
昨年Bクラスに転落し、名門復活を懸けて挑戦者の底力を見せたチームと、昨年そして今年とセリーグを制しこのシリーズでも先に優位に立った事で、心のどこかにスキが生まれたチームとの差が最後の最後に表れた今年の日本シリーズだった。しかし久々に熱くなる試合を見たような気がする。人気低迷が囁かれている昨今ではあるが、まだ日本のプロ野球も捨てたものではないと言う事も実感したシリーズでもあった。
さてこれから迎えるストーブリーグ。残念ながら今年も海を渡る選手が何人か出るだろう。しかし時代の潮流を現段階で食い止める事は出来ない。それ以外の選手が来シーズンもファンを感動させてくれる試合を多く見せてくれる事を、そして何より来春開かれるWBCで日本の野球の強さを見せてくれる事を期待したい。
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